農を変えたい!3月集会

日本農業の崩壊・解体を推進する21世紀農政

-新「基本計画」「基本計画工程表」「21世紀新農政」 -

 

 

中島紀一

 

 一年間の派手な「農政改革論」の結末は、新「基本計画」・「基本計画工程表」・「21世紀新農政」 という3つの政策文書として示された。 048月の 「中間論点整理」では、このような結末は想定されていなかった。新「基本計画」 作成についての農水省の方針転換は11月末ころにあった。 いわゆる「担い手絞り込み」の明確化に自民党筋が強く反発したこととアジアEPAの推進が本格化したことの2点が方針転換の直接の契機だった。 11月段階までは 「農政改革」論議の主舞台となり、その審議動向が注目されてきた「食料・農業・農村政策審議会企画部会」での議論は、 12月から突然、 緊張感が喪失し、締まりのない散漫な論議で時間前に早々に終了するという状態となった。政治判断がすでに決せられ、 「審議会論議」の必要性が失われたということなのだろう。

 

 「食料・農業・農村基本法」で定められた「基本計画」の枠組みは次のようである。

第十五条 政府は、食料、農業及び農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」 という。)を定めなければならない。2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針

 二 食料自給率の目標

 三 食料、農業及び農村に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

 四 前三号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

 

 この定めに基づいた「基本計画」には、これから5年間の日本農政の基本方向と段取りがすべて書き込まれている筈のもので、 したがって「工程表」も「新農政」も包摂されるのが当然の筋だろう。ところが今回は053月、 ほぼ同時に3つの政策文書は、 相互の関係が明確でない別のものとして決定された。

 「工程表」には「施策を計画的に推進していくための行政府としての実行計画として、閣議決定される基本計画とは別途のものとして作成」 と明記されている。また、「21世紀新農政」 は「食料・農業・農村政策推進本部」として322日に決定されており、 そこには新「基本計画」推進の文言はなく、文書名も「21世紀新農政の推進について~攻めの農政への転換~」 となっており、新「基本計画」とは別物とされている。新「基本計画」が325日に閣議決定される3日前のことであった。

 

 3つの政策文書のごくおおまかな内容は次のようである。

 新「基本計画」

 10年後の自給率目標については、 カロリーベース45% (現状40% )へという目標を5年先送り、 新たに金額ベース76% (現状70% )という目標を設定。自給率向上方策として「食育」「地産地消」の推進を強調。そのほかに「食料の安定供給」 「農業の持続的発展」「農村の振興」についての施策項目が総花的に列記されている。04年 「中間論点整理」の枠組みとはかなり異なったものとなっている。

 「基本計画工程表」

 一応新「基本計画」の各項目に対応する形にはなっているが、中心は「望ましい農業構造の確立にむけた担い手の育成・確保」にあり、 そこでは「農業構造の展望」(平成27年目標) が示され「効率的かつ安定的な農業経営」として「家族農業経営3337万」 「集落営農経営24万」 「法人経営1万」 に絞り込むことが明記された。

 「21世紀新農政」

 「これまでの政策に係わる常識を打ち破り、新たな価値を創造する観点に立って食料・農業・農村政策を見直し、攻めの発想に立った農政、 消費者に軸足をおいた農政、都市市民、企業など多様な主体と価値観を共有する農政、 地域や農業経営のやる気と創意工夫の発揮を後押しする農政を確立することが必要である」

 具体的には次の7課題を提起。 そこには自給率の視点も環境保全の視点もほとんど見あたらない。①消費者重視の食料供給・消費システムの確立、②食育の推進、 ③未来を拓く技術開発、④地球温暖化防止に向けたバイオマスの利活用、⑤高品質で安全・安心な我が国農林水産物・ 食品の輸出促進、⑥農業・農村に関する価値の社会的共有、⑦やる気と能力のある経営者が中心となった農業構造の確立。

 

 こうした3文書の基本的性格付けとしては、 新「基本計画」は基本法対応の建前論、「工程表」は農水省官僚農政の本音論、 「21世紀新農政」 は小泉流パフォーマンス政治家たちの政治論、 ということになろう。しかし、最大の問題点は、これらの3文書は結局、 その場を糊塗するための言い訳論でしかなく、政治の本音は、 アジアグローバリズムの推進と日本農業の解体放棄の黙認にあると言う点だろう。

 これら3文書に共通していることは、 いま日本農業は深刻な解体的危機、平成農業恐慌の直中にあることへの認識の完全な欠落である。 その危機の直接的原因が85年プラザ合意以来の円高下での農産物価格の構造的下落、 すなわち生産継続を断念せざるを得ないような止め処ない農産物価格下落構造にあることを隠蔽している点も共通している。 いずれの文書にも価格問題への言及は全くない。さらに言えば、 日本農業の問題点はダメな農家が農業を占有し続けているところにあるから、ダメな農家が離農することは良いことだ、 地域的にも離農促進運動を官民一体で作っていくことが必要だという、 驚くべき認識が平然と語られていることも重要な共通点である。「新しい価値観の創造」も「地産地消」や「食育」も、 「都市市民の農業参加」も、さらには「環境保全型農業への転換」も、そうした「農政放棄」 のための方便として便利に使われてしまっている。

 「自給を高め、環境を守り育てる日本農業の再構築をめざして」開催された「3.26有機農業振興政策の本格的確立を求める緊急全国集会」 とそれを機として取り組まれる「日本農業再構築全国運動」(仮称)は、農政のこうした誤魔化しのペテン的展開をきちんと暴き、 それと全面的に対決し、有機農業、環境創造型農業を軸とする新しい日本農業を創り出していこうとする取り組みである。 この運動は耕す農民を中軸とし、それと連帯するすべての市民、団体、事業体等を総結集して進められていく。     

 

 

[ 2005年12月05日 | 声(農政) ]


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